3代にわたって官民問わず幅広い現場を手掛ける橘一𠮷工務店。今後は住宅にもう少し力を入れたいと意欲的です。施主が本当に望む住まいを形にする、柔軟な対応力と高い技術力のルーツを伺いました。
創業1946年、社名の「一吉」は祖父の名前です。私が子どもの頃は木造が盛んで自社大工が10人くらいいて、本業以外に魚屋や喫茶店などいろんな事業をやっていた記憶もあり、1986年には観光事業部としてホテル業がスタート。現在は分社化していますが、建築が苦しかった時代には本業を支えてくれました。
建築の道に進んだのは、先輩に「直接感謝されるチャンスがある仕事だ」と言われたのがきっかけです。建築学を専攻し、卒業後はゼネコンで4年ほど現場監督のノウハウを学んで、30歳を目前に戻ってきました。2010年に社長に就任し、今に至ります。
現在は、公共事業と民間案件が6:4くらいの割合かな。創業約80年の歴史が支える信頼と、多能工の多い協力業者と連携してあらゆる分野の仕事に対応できるサービス力が強みだと思っています。建築業は、社会の役に立ち、喜んでもらってこそ存在意義がある。私が仕事をする上で大切にしているのも、「役に立ちたい」「頼りにされたい」「信頼されたい」という意欲を持ち、相手に喜んでもらうために頑張る姿勢です。
住宅は図面から提案していく自由があり、お客さまの顔が見えて「ありがとう」の声を直接聞けるのもうれしい。一方、公共事業は図面ありきの仕事で、品質が高ければ表彰などもされるのがやりがい。大変だった現場も、終わってみればいい思い出です。
住宅は年間1~2棟というペースで、本当はもう少し増やしたい。以前は建売もしていましたが、今は木造を中心とする自由設計が主軸。ご紹介がほとんどで、お施主さまへの定期訪問や点検は10年以上続ける方針。住宅は「お客さまが望み、その人に合った暮らしが実現できる家」であることが大切だと思っています。
昔に比べると官民問わずお客さまの要望や知識が増えていて、難易度が高くなる半面、社会全体の技術レベルは低下傾向です。品質を守り技術を伝えていくためにも、若い世代にはいろんな経験を積める機会をつくってあげたいですね。社員にはいつも「健康で楽しく暮らそう」と言っていて、健康経営の面では県知事賞をはじめとする数々の表彰も受けています。産育休を取得して復帰した20代の女性現場監督もいるし、男女問わず能力で見極めていく方針のもと、やったことのない仕事、使ったことのない機械、新しいことにはとにかくチャレンジしていくつもりです。本業を通じて、知らなかったことを学べるのは楽しいですよ。